つい先日からCS放送のプログラムでアメリカミシガン州のドクターポールという年配の獣医さんの現場仕事の様子を伝える番組を録画し始めました。日本の無料地上波ではこんな番組はありません。アメリカの人たちはこんな番組を普通に見られる幸せ者ですね。つくづくアメリカの偉大さを感じます。
以前も時々タイミングが合えば少しの時間この番組を見たことはありました。録画してまで見ようと思ったきっかけは、牛の切胎術や馬の安楽死を放映していたからです。牛の胎児がお腹の中で大きく育ちすぎて分娩不能になり胎児がお腹の中で死んでしまった場合に胎児の肩甲骨を切断して取り出します。そのシーンは私にとっては懐かしい場面です。
私が平成元年に福山に帰ってきて、主に牛の診療をして居た父親の仕事を手伝いながら犬や猫の診療をして居た頃の話です。芦田川沿いにある畜産農家の牛舎の中でベテラン獣医師の父親が包丁を布で巻いて切胎を始めました。
お前、やれぇ。
えーー、そんなんしたことない、やって。
流石に当時の私はそんな状況だったと思います。もちろん、死んだ胎児を取り出すのは自分がやりましたが、肩甲骨を外すのはほとんど父親がやったように記憶しております。
後にも先にも切胎術なんてその時しかありませんでした。チャンスは一度だったんですね。今なら上手にできる自信しかありませんが・・・。そんなチャンスはないでしょうね。
人生いろいろな体験をします。でも、こう言ったチャンスがあってもなかなか経験のないことをいきなり現場でやれと言われてもできませんよね。歳を重ねて、失敗をたくさん経験してそのハードルを乗り越える気持ちが芽生えないとなかなかこのハードルを越えることはできません。
この番組を見てその当時の自分の心境が蘇ってきました。獣医師の仕事ってそんなにかっこいいものでもないし、綺麗でもない、オシャレでもない。そんな現場をそのまま放映できるアメリカは悔しいけれど面白い、でっかい国なんですよね。